慈悲を。


バイト後２１：３０。
雨のモスバーガーは人もまばら。
別に仏教徒ではないけれど
ブッダの教えを読んでいた。
来週に迫った　とある講義のテストのために。


愛は執着であると言う。
苦を生むものであると言う。
ああ　なんだか　分かる気がする。
執着するこころ。
縛られたこころ。
自由になれない。
息が苦しい。


表の雨は激しくなるばかり。
路面を叩く音はガラスの向こうのできごと。


”愛”ではなく”慈悲”。
愛と憎しみを越えた世界があると言う。

慈しむこころ。
それは　穏やかで
暖かくて
優しいんだろうな。

そしてそれを今
こころの何処かで実感してる自分がいる。


ガラスの向こう側。
スコールのように　雨は激しさを増していく。


何かを無くしたんだろうか。
少し前の自分は
きっとこんなに穏やかじゃいられなかった。
無くしたのか
得たのかさえ分からない。

諦めなのか許しなのかも分からない。
きっかけさえ分からない。
ただ　ほんの少し風は穏やかで
その瞳に憂いを残したまま
それでも微笑んでいる。

愛ではなく慈悲を。
執着ではなく許しを。

受け入れること。
この両の手で。



雨が遠くなる。
２３：１５。