傷跡


どうして降らないでいい時に限って降るの。
降って欲しい時降らなかったくせにね。
自転車は雨を切って坂を下る。
髪を伝って雫が落ちた。

夜の街灯の下。
浮き上がる走り慣れた道。
何も変わらない帰り道。
濡れたアスファルトは
まるで傷跡みたいなツギハギ。

もう子供じゃないから
坂道だって怖くないよ。
自転車だってちゃんと乗れてる。
もう怖くない。

薄暗い街灯の下。
濡れたアスファルトは
まるでわたしとおんなじツギハギ。
今だ残るツギハギ。

雨は何にも変わらない。
年が過ぎても 場所が変わっても。
深い音は何も変わらず 在り続けるだけ。
ここに。 ここに。
在り続けるだけ。

わたしのいのちもここに 在り続けてる。
変わらないものを抱えて生きてる。
左足に残ったままの
生きていた証。
生きている証。

歳を重ねても 誰の側にいても。







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